あ、私もこれ欲しい!
6月25日、ソリスツ・ヨーロピアンズ・ルクセンブルク演奏旅行の、バス車中のスナップです。この日は、このオーケストラの誕生日1989年7月1日に最初のコンサートが開かれた、南ドイツのオットーボイレンに、向かっていました。晩にコンサートですから、バスの中で睡眠をとっておきます。アイマスクの人物は、パリから来ている首席ヴィオラ奏者の Jean Dupouy です。描いてあるこの眼は日本人離れしていますから私には使えませんが、どなたか日本人仕様の品をご存知でしたら、御一報くださいますようお願いいたします。
そして背後に小さく顔が見えますのが、ソリスツ・ヨーロピアンズ・ルクセンブルクのフランス人事務局員アンです。朝7時半から17時ころまで働いています。この楽団はオーケストラ事務局も素晴らしく、ドイツによくある仕事が遅い上に「楽員を管理したがる」事務局→楽員のモチベーション低下、という図式でではなく、楽員が安心して気持ち良く演奏に打ち込める環境を整えてくれます。連絡事項、質問など、迅速且つ完璧にこなしますのに、自分がミスを犯すのではないか、といつも恐れています。フランス人にもこういう人がいるんですねえ。ちなみにワインとチーズが嫌いで、ルクセンブルクの日本レストランで食べられるたこ焼きが、大好物なんだそうです。
今回の産経新聞のコラム「ベルリン音楽旅行」には、このアンが登場します。
ビンゴー!
ドイツの日本人相手の旅行会社では、日本では買うことのできない「里帰り便」というドイツ発日本までの往復航空券を、入手できます。同じ航空会社のホームページで買うと預ける荷物は23kgまでですが、故郷まで往復する日本人のニーズに応えて旅行会社が交渉してくれた結果、30kgまでOKです。これは非常にありがたいことで、日本に里帰りした後ドイツに向かうのトランクに、日本食材をたっぷりと詰め込めます。今回のも100%日本食材です。2009年1月パリ・シャルルドゴール空港ういろう事件(セキュリティー・チェックで警備員に笹の葉にくるまれていたういろうを疑われ、笹の葉を剥がされういろうを汚い指で直接グイッと圧されたので、渡辺が怒り狂った)以来、食材はすべてトランクに入れて預けることにいたしました。自宅を出る前に、体重計に乗せ、おおむね30kgチョイくらいに詰めます。1~2kgオーヴァーは、おまけしてくれるからです。
練習のいろいろ
『朝練』 もともと中学や高校部活動の学校始業前にする練習を指しますが、広義には朝早起きしてする練習と捉えられます。体、脳、神経ともに新鮮で最も効率が上がる時間帯ですから、多くの大演奏家が実践してきました。
『夜練』 一般家屋では、周囲のご理解を頂きながら最遅でせいぜい21時あるいは22時までが、練習可能限度のようです。それに対して、24時間練習できる環境の恩恵を享受できる幸せな演奏家も中にはいます。ただ結果的には、夜中の2時3時まで練習するよりは、前述の朝練の方がより効果を期待できるようであります。
『コソ練』 一般的に、演奏家は様々な理由により自分が練習している音を他人に聞かれたくないと思っています。そこで誰もいない場所に移動して、こっそり練習します。秘密の練習法を隠すための手段ではないかと勘ぐりたくなりますが、ほとんどの場合、ただほっといてもらいたいだけのようです。誰かが必死で練習するのを傍で聞いていると、思わず茶々を入れてみたくなりますもの。
『フケ練』 授業始めに出席の確認が済んだ後、教師が黒板に書いている隙にゴキブリのように床を這って教室から脱出してまで敢行する練習です。語源は「授業をフケる」に由来します。稀に後でお目玉を喰らう可能性がありますから、上手な言い訳を考えておくのが得策でしょう。
『外練』 屋外で練習しますと、響きのイメージ空間が無限大であること、残響がゼロに近いこと等、その練習効率については賛否両論ありますが、根性だけは間違いなくつくようです。ちなみにフルートの場合、前方から風が吹いてくると発音できなくなりますので、無風が条件です。
私にとってかけがえのない音楽の栄養
私は今、ソリスツ・ヨーロピアンズ・ルクセンブルクについて長編の原稿を書いています。書き上げて、今回の産経新聞のコラム「ベルリン音楽旅行」と併せて当ブログにてご紹介させて頂こうと、思っていました。内容的に重なるからです。ところが書きたいことばかりで内容が膨らみ過ぎ、まとめるのが大変になってしまい、締め切りをとっくに過ぎていますのにまだ完成していません。
若い管打楽器奏者の登竜門として絶対的権威を誇る日本管打楽器コンクールの主催者、日本音楽文化教育振興会からの依頼です。今年のオーボエ部門審査委員長を仰せつかりました関係で、HPにアップされます。理事長の赤松憲樹様、遅延すみません。この方の日本管打楽器界の啓蒙という理念が具現化されたのが、日本管打楽器コンクールであります。このような方がいらして今日の音楽界が成り立っているのだなあと、お話を伺うたびに感服致します。
この原稿がアップされました暁には、皆様に改めてお知らせさせて頂きます。
遠く離れて愛する故郷
遠く離れて愛する故郷の、目を覆うばかりの惨状に、呆然とするのみで言葉もございません。東北方面の親戚宅で壁や瓦が崩れたり、食器棚が全滅したりしたものの、皆無事でした。しかし、地震から3日間日本の家族に電話が全く通じず、気を揉みました。
ドイツ版 CNN の n-tv や N24 では地震関連のニュースのみでぶっ通しでしたし、インターネットでNHKニュースなども見ました。両国の報道の仕方が多少違いまして、おそらく足して2で割ったあたりが正しい情報だったのでしょう。
ドイツは反原子力発電の意識がもの凄く高い国で、2000年に「原子力発電からの脱却」が決定されました。その後政権が代わったり、二酸化炭素排出量削減のためもあり撤回されたかのように見えましたが、ここにきて世論がそれ見たことかと完全に反原子力発電一色に染まりましたので、メアケル首相も慌てて「原子力発電は、次世代の安全なエネルギーが開発されるまでのつなぎのエネルギーです。」と、改めて強調しました。技術上あり得ないのに「古い型の原子力発電所は今日にも止めます。」とまで言わなかったら、政権が転覆していたかもしれません。先日のバーデン・ヴュルテンベルク州議会議員選挙では普段は10%に満たない緑の党が大躍進して約25%を獲得、なんと驚くべきことに緑の党の州首相が誕生しました。
事故が起こると手がつけられなくなる原発の恐ろしさ、福島第一原発で思い知らされました。日本人の叡智を結集して、もうこれ以上被害が拡大しないまま事故処理が一日も早く完結することを、祈ってやみません。
同時に何本もの列車が最高時速300キロで運転されていた東北新幹線で、早期地震検知システムによる非常ブレーキのお蔭で一両も脱線しなかったなんて、日本人の叡智の誇るべき結果ではありませんか!
さて、3月の産経新聞のコラム「渡辺克也のベルリン音楽旅行」をご覧ください。今回のコラム、大阪版には掲載されましたが、東京版では地震関連のニュースのため休載になりました。
よく響く高~い天井
まず今回の産経新聞の私のコラム「渡辺克也のベルリン音楽旅行」
です。
掲載された直後に、こんなコンサートの依頼が舞い込んできました。
2月23日19時
ベルリン博物館島(ベルリン中心部の中州です。)の旧博物館
古代ギリシャのアンティークコレクション・オープニングセレモニー
オーボエ伴奏無しのアカペラ
政治文化関係要人、各国大使等招待客のみのクローズド
その会場の写真をご覧ください。予知?デジャヴ??念ずれば通ず???どれも少し違うような気がしますが、とにかくよく響く高~い天井です。
2月23日19時
ベルリン博物館島(ベルリン中心部の中州です。)の旧博物館
古代ギリシャのアンティークコレクション・オープニングセレモニー
オーボエ伴奏無しのアカペラ
政治文化関係要人、各国大使等招待客のみのクローズド
その会場の写真をご覧ください。予知?デジャヴ??念ずれば通ず???どれも少し違うような気がしますが、とにかくよく響く高~い天井です。
もし上のドーム部分の半球を延長して大きな球にしたら、銅像が置いてある場所で丁度床に接することになるという、こだわりの寸法による特別な設計なんだそうです。こういう理屈っぽいのがドイツ人は好きなんですねえ。独特の共鳴の仕方の関係で立ち位置によって音の響き方が驚くほど違うので、必ず試奏に来てくださいということです。古代ギリシャのアンティ-クコレクションということで、ギリシャの神々に関連付けてブリテンの「オヴィデウスによる6つの変容」にするか、芸術の力強さに対抗すべくバッハの無伴奏パルティータにするか、現場で試奏してみて決めます。2月8日午前10時開館前の9時に入場しての打ち合わせ、楽しみです。
P.S.
オーケストラの中で演奏できて本当に幸せ
2010年最後の仕事は、ベルリンのすぐお隣の町ポツダムでのジルヴェスター・コンサートで、ベートーヴェンの7番のシンフォニーとシューマンの2番のシンフォニーというプログラムでした。シューマンの2番というのは大好きな曲の一つで、「オーケストラの中で演奏できて本当に幸せだ。」と思えたひと時でした。リヒャルト・シュトラウス「薔薇の騎士」全曲演奏時然り、ヴァーグナー「指輪」全曲演奏時然り、ソロ活動では味わえないまた別の喜びの世界です。新年も健康で、ソロ活動中心に、オーケストラのお仕事も沢山させて頂いて…という事が続けられますように。
終演後楽屋で着替えていると、首席ビオラ奏者に背後から、「今日のお前の演奏は、最初の音から最後の音まで実に素晴らしかった。」と声をかけられました。嬉しいところですが、ここで「どうもありがとう。」なんて素直に言ってしまうのはまだまだ洟垂れ小僧です。最近はようやく大人になりまして、「Das war extra für Dich! (貴方の為に特別に頑張ったんですよ!)」なんていう冗談がすぐに出てくるようになりました。