演奏家冥利に尽きます

 アメリカ合衆国からベルリン拙宅(一応外壁が白いので、白亜の城ということにしておきましょう。)に、郵便が届きました。中身が何なのかは、実はもうわかっているのです。ミゲール・デル・アギーラ作曲オーボエとピアノの為に書かれた「Summer Song」の、リニューアルされたばかりの楽譜です。
 
 アギーラはアメリカ在住のウルグアイ人作曲家で、それはそれは魅力的な作品を紡ぎだす、稀有の才能の持ち主です。何しろ、後述のアメリカ人オーボエ奏者マーク・ワイガー氏演奏による同作品の素晴らしいCDを聞いて、私は一耳惚れしてしまったのです。ウィーンで勉強した人だったので、彼のHPを通じてドイツ語でEメールのやり取りをさせて頂きました。
 
 「実はあのCDのヴァージョンの楽譜はもう無いのです。あの続きを完成させた最終ヴァージョンがあり、絶対こちらの方が良いから、今後はこちらを演奏してください」。その楽譜は手書きのコピーを簡単に綴じただけもので読み辛く大変でしたが、確かにこちらのほうが良いです。
 
 ここまで熱く本格的なオーボエの為の南米のクラッシック音楽というのは他に例がありませんので、貴重であると同時に、お客様にどう受け止められるか少々心配でした。とあるコンサートで、中間部をすっ飛ばして思いっきり縮めたヴァージョンをアンコールで演奏してみましたら、お客様から、「アンコールが一番良かった!」と。嬉しいのか悔しいのか…。すぐに次のCDで録音する決心をしました。
 
 ベルリン・イエスキリスト教会でのレコーディングではいの一番に録音して、とりあえず大まかに編集したものをYouSendItでアギーラに送り、最終日に変更希望箇所を録音し直しました。一所懸命協力してくれて、新たに閃いて作品そのものの変更箇所すら出てきたほどした。
 
 そうして出来上がったCD、そのタイトルも「Summer Song」の2010年リリースをきっかけに、今度は楽譜をきれいに印刷することになりました。私の普段の信条で、速いところは指定のテンポより速く、遅いところはより遅く演奏していたのですが、アギーラが自分指定のテンポよりその方が良いと言って、リニューアル版楽譜は、私のCDからメトロノームで測って変更してくれたそうです。何とも名誉なことではありませんか!
 
 そして、楽譜の表紙を開いたページの前書きに、私の名前とCDタイトルが書かれていました。私が尊敬するマーク・ワイガー氏のCDタイトルと並んで…。
 
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 演奏家冥利に尽きます。
 
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