飛行機雲のないひたすら真っ青な空

 ヨーロッパの空から飛行機雲がなくなりました。
 
 火山灰がジェットエンジンに入ると、エンジンの熱で溶けてベトベトになりエンジンを止めてしまう・・・よってドイツをはじめヨーロッパ中の殆どの空港が閉鎖され、上空を飛ぶことも禁止されました。飛行機で期日までに飛ばなくてはならない予定のある人にとっては悪夢です。
 
 机の上がいつもより多少ザラザラしている様な気がしますし、花粉症とはあまり縁のない私ですが、目が赤くチクチクします。火山灰の影響が3日経っててベルリンにも到達していました。
 
 現代における飛行機雲による日照量の損失は決して少なくないらしいですが、確かに格段に明るいです。ピアニッシモの練習をするときに邪魔になる飛行音もなくなりました。こうなるとどうしても環境問題について考えざるを得ません。
 
 宇宙で地球と火星が久しぶりに接近したときの会話です。
地球「久しぶりだね!元気?」
火星「お蔭で元気にやってるよ。どうした、あまり顔色が良くないようだけど。」
地球「うん、今病気でね。ホモサピエンスに罹ってしまったんだ。」
 
 地球の側から言えば、人間というのは非常にたちの悪いヴィールスあるいは害虫と言えましょう。地球の表面を掘り起こし変形させ、化石燃料を燃やし有毒ガスを撒き散らし、他の生物を喰い荒らし、挙句の果てに戦争をしてお互いを殺し合います。
 
 とはいえ、優れた文明や素晴らしい哲学、美しい文化をこの地球上に生み出したのもまた人間です。例えば音楽とか!生物が性として持つ闘争本能を抑え個人の命と平和を一番大切にすることも、人間は長い時間かかって学びました。人間も決して捨てたものではないのです!!
 
 それに、今さら飛行機を必要とする現代生活を否定し原始人に戻ること自体、意味のないことだと思います。
 
 ただ、私がこの飛行機雲のないひたすら真っ青な空の下で思いを馳せるのは、確実に人間は自然と大地によって生かされているのだ、ということです。
 
   追伸
 
 私のブログのほとんどは、ベルリンールクセンブルク間の列車の中で作製されたものです。まずノートブック用電源コンセントに近い席を確保します。鉄道マニアにはよく知れ渡っていることですが、ドイツの鉄道は地盤と線路がとてもしっかりしていて揺れも極端に少ないので、8時間も車中ですが非常に快適な「走る書斎」です。ドイツとルクセンブルクの国境の町トリアーももうすぐというあたりでこのブログもここで仕上げと思っていたら、ソリスツユーロピアンズ・ルクセンブルクの事務所から焦燥しきった声の電話がかかってきました。指揮者がポルトガルからルクセンブルクまで飛べず、同様のトップレヴェルの指揮者も移動できなかったりで見つけることが出来なかったので、今日から練習が始まる19日のコンサートはキャンセルに・・・。こんなことは初めてです。おそらくヨーロッパ中で指揮者やソリスト、オーケストラの移動が出来なくて、あちこちで大変なことになっているに違いありません。ソリスツユーロピアンズ・ルクセンブルクは私の大切な栄養なのに・・・。非常に残念。
 
 そう落胆しながら車窓から空を見上げると、やはり眩しいばかりの飛行機雲のないひたすら真っ青な空が広がっているのでした。
 
   もう一度追伸・・・旅行中に付きお許しください
 
 とにかくルクセンブルクまであと1時間のところまで来てしまっていましたし、20日は朝一番の列車でフランクフルトに向かいそこから日本に飛ぶべく列車の切符などすべて手配済みでしたし、事務所が用意したいつもの滞在先の結構良さげのホテルにゆっくり泊まっていってくれというので、お言葉に甘えてホテルで3日間練習三昧です。今はそんな訳で極楽ですが、さて20日朝フランクフルト空港ではどんな阿鼻叫喚が私を待ち受けているのでしょうか?日本で22日からどれも欠けることの出来ないコンサートのスケジュールが入っているのです。